月組公演 『フリューゲル -君がくれた翼-』『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』 | 宝塚歌劇公式ホームページから引用
月組『フリューゲルー君がくれた翼ー』『万華鏡百景色』の東京公演を見てきました。
大劇場公演観劇後にフリューゲルの感想は記事にしたので、今回は万華鏡百景色の感想です。
栗田優香先生のショーデビュー作にして意欲作
一言で言うと、栗田先生が今までにない月城かなとをこれでもか!と繰り出すデビュー作にして意欲作でした。
『ダル・レークの恋』あたりから、月城かなとのイメージは「高値安定」でした。
絶対いいものを見せてくれる安心感と表裏一体で、予測可能性が高かったのです。
いつ行っても素晴らしいクオリティが担保されていることは嬉しいのですが、たまにはちょっと違う面も見てみたいな〜と思ってしまうのがわがままなファンというもの。
そんなところにお出しされたのが今回のショー。
栗田先生、色々な月城かなとを見せてくれてありがとう!
パンフレットを開いた時点で伝わった。今回の月城かなとは違うぞ、と。
むしろ栗田先生ご自身が、あんな月城かなと、こんな月城かなとが見たい!と構成したのではなかろうか。
それだけ演出家のエネルギーを感じる構成だったし、新しい月城かなと=新しい月組像に月組生一丸となってチャレンジしていた印象でした。
退団1作前にこのショーがあったのは、月組生にとってもファンにとっても僥倖だと思う。
モリタがむむむ!これはレア!と思った場面だけでもこのとおり。
- 黒髪の和風ファンタジーな月城かなと(吉原遊廓。この雰囲気は雪組時代の青紫以来…?)
- 白軍服月城かなと(鹿鳴館。意外とここまでベタな軍服は珍しいような…「赤と黒」で真っ赤な軍服は着ていたけど)
- ショッキングピンクに花札柄のマント、怪しいサングラスのうさんくさい闇市のドン月城かなと(闇市。リップの色も最高! ドンの衣装はパンフレットにも採用)
- ピンクのテロテロスーツ月城かなと(中詰。IAFA以来の衣装のテロテロ感)
- 青いアイシャドウに黒いリップ、羽付きウィッグの月城かなと(スクランブル交差点。ロミジュリの「死」のようなダークな雰囲気。でもカラスだからね、血が通っている感じがあった)
そしてデュエダンでは安定の月城かなとが帰ってきました。輪廻の果てに巡り会えた海乃美月との多幸感たっぷりのデュエットダンス、よかったです。
同時退団を発表して肩の荷が降りたのか、最後まで2人でがんばろうね、と絆を新たにしたのか、東京公演では幸せオーラがぐぐっと増していました。
以下、印象に残った場面を記録します。
吉原遊廓
花火師と花魁の場面の付喪神達、新公主演経験者ばかりでとても豪華!
誰を見ればいいのか迷いに迷った結果、1回目は夢奈瑠音、2回目は英かおとを中心に見ました。トップコンビも狂言回しの鳳月杏も見ないとで大変忙しい。
付喪神のたちの表情がとてもよかったです。
花火師と花魁を暖かく見守っているようで、冷たくつき放しているような不思議な表情。それでいて、演者それぞれ、微妙に温度感が違っていました。
最後は、花火師をぶった斬った付喪神・英かおとに釘付け。
何、あの表情は…。
銀座煉瓦通り
かわいいで舞台がうめつくされたサンリオのような場面でした。
彩みちるのモガと礼華はるのモボ、かわいーーー!
彩海せらのモボと白河りりも大変かわいい。
「かわいい」しか出てこない場面の中心が、二桁学年99期生・彩みちるだというところが、とても月組らしくて好き。(受け継がれる千海華蘭芸)
地獄変
かわいい「銀座煉瓦通り」からの温度差が強烈な場面。
鳳月杏演じる「芥川龍之介」と男役による女役「業」たちで作り上げた、芸術的とも言える場面でした。トップコンビが出ていない場面でこれだけのクオリティ、今の月組の層の厚さを感じました。
裸足でのダンスは猛々しく鬼気迫るのに、スカートのスリットが深いせいか不思議な色気がある。この壮絶な場面で「業」たちに色気を感じてしまうことが、目の前で娘が燃えているのに筆を止めることができない良秀の背徳感と重なってゾクリとしました。
1回目は夢奈瑠音、2回目は英かおとに注目して見ました。
夢奈瑠音は良秀を直接誘う「業S」。フリューゲルといい、いい配役ですね。
朗らかで爽やかなイメージの強い英かおとによる「強い」女役はハッとするほど色気がありました。
大殿演じる蓮つかさもよかった。退団公演で演じきった憎まれ役、素晴らしい。
この場面唯一の娘役・天紫珠李。悲劇の娘を演じながらも「業」の圧に負けてないところがさすが。『応天の門』といい、平安ものが似合う。
場面ラストの芥川龍之介もとい良秀の影だけが幕に残る演出も素晴らしかった。
闇市
衣装もキャラも濃ゆい!
今まで月城かなとに、清濁併せ呑む男の世界で生きる男!のイメージが無かったので驚いたけど、すごく楽しそうに演じていました。風間柚乃との男臭い因縁を感じるキャラ設定もめずらしい。
東京公演ではこなれて、いい意味でのゆるさが出ていた。
コテコテの柄の悪さとサングラスでは隠しきれない品の良い容姿。
それが海乃美月演じるチャイナ服の娼婦との間の過去の純愛に説得力を持たせていました。戦前は2人とも、闇市のような混沌とは縁の無い世界で生きていたのでしょうね…。
海乃美月と歩く米兵・七城雅のオラみも大変よかった。
ロケットダンス
モノトーンのアクティブなショートパンツ衣装によるロケットダンスもよかったー!
BADDY以来の、なんだかスカッとするロケットでした!
愛希れいかと同じく元男役の天紫珠李だったからだろうか。健康的で明るくて、朝見たいロケットダンスでした。
「STAY TUNE」
Z-BOYSはショー定番の若手男役達による場面。これからこの子達活躍していきますよ!というメンバーを1人1人覚えられるから好きです。
このゆるゆるの衣装でかっこよく、というのは男役としてかなり難易度高いと思うけど、さらっと着こなしててよかった。
月組の若手男役達、スタイルがいい人多いもんな。
スクランブル交差点
ここもよかった〜。
冒頭から、本公演で退団する蓮つかさによる満員電車に揺られるサラリーマンがインパクト大きい。日常の疲れを感じる気だるい歌声なのにしっかり歌詞が聴き取れて、芸が細かい。
くたびれてはいるのだけど、どこかまだ何かを諦め切ってはいない、宝塚の男役ならではの不思議なサラリーマンでした。
夢奈瑠音のゆるゆる白パーカーに黒キャップ姿も好きだ。
男役歴10年以上だからこそ出せる、ただのゆるい若者じゃない、不思議なオーラがある。
街ですれ違った時に、今の人めっちゃ顔小さくない?!と慌てて振り返っても、すでに姿は無いような。
それこそ東京という街が人の姿をとったようだった。
フィナーレ
椎名林檎「目抜き通り」をバックにワインレッドのスーツで娘役たちと踊る鳳月杏、めっちゃいい場面でした。ずっと見ていたい。
彩みちる、天紫珠李の黒髪ボブに赤をきかせたメイクもめっちゃ素敵。
男役群舞でしみじみ感じましたが、今の月組は層が厚い上に、個性が際立っていますね。
トップから3番手まではもちろん、それに続く礼華はる、彩海せらや新公主演経験者の夢奈瑠音、蓮つかさ、英かおとに至るまで、持ち味がうまいことばらけている。
ほんと、目が足りなくてオペラグラスがふらふらします。だから何度も行きたくなってしまう。
11月7日(火)から、主演トップ娘含む大規模な代役公演まっただ中ですが、層の厚い月組ならきっと乗り越えられるはず。
(公開前に劇団から発表がありました。11月11日(土)11時公演から海乃美月復帰! よかった!)
代役公演を経験値として、全員揃った千秋楽公演を迎えられることを祈っています。