東京宝塚劇場で月組公演「グレート・ギャツビー」を見てきました。
私が宝塚に求めているものがぎゅっとつまった、めちゃくちゃ満足度の高い観劇でした。
男役のスーツ姿のクラシカルなかっこよさ、初々しい恋愛模様、誰かと軽く小一時間は語りあえる登場人物たちの人生模様、終盤の悲劇に向けて演者たちの狂気すら感じる演技。
間違いなく、月城かなと率いる芝居の月組の代表作になる作品だと思います。
「乙女の夢」を体現する月城ギャツビーが浮き彫りにした、どうしようもない「現実」
小池先生は宝塚の三谷幸喜だと思っているところがありまして、演出家が表現したいテーマと大衆受け要素がバランスよく混ざっているところがとても好きです。
「グレート・ギャツビー」のテーマは「結局振り向いてくれない愛する人のために全てを尽くす男のロマン」でしょうか。
真面目さが持ち味の月城が演じたことで、テーマがより際立っていたと思います。
ギャツビーがデイジーのために手に入れ、差し出したもの全てが、自意識を捨てた純粋なものに感じました。
月城ギャツビーは、美しく、財力があり、その全てを自分のために向けてくれる…女性向けの恋愛小説に登場するヒーローのように乙女の夢を体現する存在です。
何より、泥沼を這う努力をしてこの要素を揃えたギャツビーの涙ぐましい日々が胸を打ちます。
色々ツッコミどころはあっても、それが健気さに変換されてしまうビジュアルも強い。
でも、デイジーは差し出されたものを拒ばむことを選んだ。
月城ギャツビがー魅力的であればあるほど、デイジーにそうさせた世間体や子供の未来といった「現実」が浮き彫りになります。
観客の年齢や家庭環境などによって、受け取り方や感想が大きく変わる作品だと思います。こういう作品すごく好き。
確かに、現実的に考えると、ギャツビーは裏社会と手を切った後、どうやってデイジーが望む生活レベルを維持していくつもりだったのかなぁ。
デイジー、年に1度は本場ロシアまでバレエを見に行きたいの!とか言い出しそうだものなぁ。
月組子の魅力あふれる場面もたくさん
VISA協賛による豪華な衣装、今回の再演から追加されたジーグフェルド・フォリーズの場面をはじめとする華やかなシーン、路線男役たちの二面性のある演技が「宝塚見にきたーーー!」とめちゃくちゃ満足度高かったです。
特に、路線男役達による昼はギャツビー家の使用人/夜は裏社会の顔という二面性ある役はさすが芝居の月組。
輝月ウルフシェイム率いるダンスシーンでのみんなの野望に満ちた目、めっちゃよい。
他にも、ギャツビー邸での舞踏会やゴルフコンペなどでの組子のバイト出演も見どころ。
名前の無い登場人物であっても性格を想像させる小芝居上手な月組にぴったり。
ゴルフコンペ場面なんて、きゅるんきゅるんの千海華蘭キャディに気を取られてあやうく本筋を見逃すところでした。
組ファンなら一粒で何度もおいしいエンタメに仕上がっていた「グレート・ギャツビー」。全部味わうには目が足りない。観劇回数も足りない。
東京千秋楽公演はいつも配信で楽しんでいるのですが、今回は「グレート・ギャツビー」の世界にどっぷりつかるためにライブビューイングで見る予定。
今から楽しみです。